氷河期世代が試しに転職エージェントに入力してみたら

就職・転職・再就職
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──娘世代に向けて書き残しておきたい「構造の話」

氷河期世代の私は、求人誌とハローワークだけを頼りに働いてきた。 そこに載っている年収が“日本の標準”だと信じて疑わなかった。 ある日ふと、転職エージェントに自分の情報を入力してみた。 結果は0件。 その数字が、私の見てきた世界の“狭さ”と“構造”を静かに教えてくれた。

本稿では、私がそのとき気づいた 「賃金は努力ではなく業界の体力で決まる」という構造 と、 娘世代に伝えておきたい “未来の選び方” について書いていく。

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エージェントに入力してみたら「0件」だった

以前に「再就職と転職─大きすぎる違いを知った日」の話を書いたが、これはその続編のような話になる。

氷河期世代、50歳になった私は、転職エージェントというものを使ったことがない。 言葉としては知っていたが、高卒で履歴書には工場勤務やサービス業が並ぶ自分には、 どこか“別世界の物語”のように感じていた。

だから、求人誌とハローワークが私の選択肢だった。 そこに載っている年収が、日本の標準的な相場だと思っていた。

工場勤務やサービス業で働いてきたから、 求人票の総額表示や残業代のカラクリには慣れていた。それでも「この世界が標準なんだろう」と思い込んでいた。

ある日、パソコンを触っていて、ふと目にとまった転職エージェントのサイトにお試し入力をしてみた。 年齢を入れ、職歴を入れ、地域を入れ、現在の状況を「無職」にして検索を押す。

結果は、0件。 次に年齢を若くしても0件。 今度は東京にしても0件。

無職の選択肢を入れた瞬間に、 数万件見えていた“転職の世界”が閉じていたのだろう。

その0という数字は、 これまで歩いてきた道の“構造”を静かに突きつけてきた。

そして同時に、 私には見えていなかった数万件の求人が、気づきの向こう側にまだ存在していた。

私は“片側の世界”しか見ていなかった

転職エージェントとはどんなものかを調べると、なにかに気づいた。

私が見ていた世界は“低賃金の世界”だったのだと。 そして、企業が高額な紹介料を払ってでも人を採りたい世界が、 まったく別の場所に存在していたのだと。

ハローワークは「安定雇用の確保」が目的で、 賃金水準は低めの求人が中心。 求人誌は地場企業が多く、賃上げ体力は弱い。

一方で、転職エージェントは企業から成功報酬を受け取るビジネスだ。 だから 年収を出せる企業しか登録しない。 求人の平均年収が高くなるのは当然だった。

私はただ、片側の世界しか見ていなかった。

賃金は“個人の努力”ではなく“業界の体力”で決まる

ここでようやく理解したことがある。

賃金は、個人の努力よりも“業界の賃上げ体力”で決まる。 これは資格よりも強い。努力よりも強い。 そして、人生の難易度を左右する。

転職エージェントに年収の何割も報酬として支払える企業というのは、 それだけの利益率と余力を持つ“体力のある業界”だということ。

◆ 賃上げ体力のある業界とは何か

若い人に伝えたいのは、難しい専門知識ではなく、 “構造の見方” だ。

賃上げ体力のある業界には、はっきりした共通点がある。

  • 利益率が高い
  • 労働集約度が低い(人を大量に雇わなくても回る)
  • 専門性が高く、代替が効きにくい
  • 市場が伸びている

逆に、工場・サービス業・小売・介護・物流などは、 人手を大量に必要とし、利益率が低いため、 どれだけ頑張っても賃金が上がりにくい。

私の歩いてきた世界は、まさにこちら側だった。 努力が足りなかったわけではない。 構造がそうなっていた。

◆ エージェント案件が多い職種の特徴

転職エージェントは企業から成功報酬を受け取る。 だから、扱う職種は自然とこうなる。

  • 専門性が高い
  • 人材不足が慢性的
  • 企業が“お金を払ってでも採りたい”
  • 成果が数字で見える

代表例は:

  • ITエンジニア
  • 法人営業(BtoB)
  • 経理・財務
  • 人事(採用・制度)
  • デジタルマーケティング
  • コンサル

これらはハローワークにはほぼ出てこない。 出ても年収帯がまったく違う。

つまり、 「どこに求人が出ているか」で、その業界の体力が分かる」 ということだ。

◆ 新卒で入るべき“構造的に強い”領域

若い人に伝えたいのは、 努力の量ではなく、努力を投じる場所で未来が変わるということ。

新卒で入ると強いのは、

伸びている業界 × 汎用性の高い職種

この掛け算だ。

業界と職種は混ぜてしまいがちだが、 転職や再就職の世界では 違いを知っておくことは重要 になる。

私はアメリカの「転職するほど給料が上がる」仕組みを調べたとき、 この構造を知った。 上がるのは“個人の能力”ではなく、 “業界の賃上げ体力”が高いから転職しても上がるのだ。

たとえば:

  • IT・SaaS × エンジニア/法人営業
  • 製薬・医療機器 × 研究/営業
  • インフラ(通信・電力) × 技術職
  • 金融 × 法人営業/企画
  • 商社 × 営業/管理部門

こうした “伸びている業界 × 汎用性の高い職種” の掛け算は、 新卒で揃えられれば最強だ。 転職でも、安定でも、キャリアの選択肢でも、ずっと有利に働く。

ただし、ここで強調したいのは、 両方を最初から揃えなくてもいい ということだ。

アメリカ式のキャリアは、 まず 業界か職種のどちらか片方だけでも“強い側”に移る。 そこを足場にして、次の転職で残りの片方を揃えていく。

たとえば、

  • まずは「IT業界のカスタマーサポート」に入る
  • 次の転職で「IT × 営業」へ
  • さらに経験を積んで「IT × 営業 × 高単価商材」へ

こうして 片方ずつ揃えていくことで、年収も市場価値も階段状に上がっていく

最初から完璧な掛け算を狙う必要はない。 大切なのは、 “強い業界か、強い職種のどちらかに足をかけること”

その目線を持てるかどうかが、未来の切り開き方を変える。

娘世代に伝えたい「構造を知る」ということ

どんな仕事にも価値がある。 それは本当にそう思う。 工場で汗を流す日々も、サービス業で人と向き合う時間も、 人生の一部として確かに積み重なってきた。

けれど、今回エージェントに入力し、私なりに調べて分かったのは、 “世界は最初から分かれていた” という事実だった。

私は長いあいだ、 求人誌とハローワークに載っている世界だけを“日本の標準”だと思っていた。 でもその裏側には、 企業が高額な紹介料を払ってでも人を求める、 まったく別の世界が広がっていた。

その世界は、 賃上げ体力のある業界 専門性の高い職種 市場が伸び続ける領域 そうした“構造的に強い場所”で働く人たちの世界だった。

若い人たちには、どうかこの構造を知ってほしい。

努力の量ではなく、 努力を投じる場所で未来が変わる。

伸びている業界に身を置くこと。 賃上げ体力のある領域を選ぶこと。 専門性が積み上がる職種に挑戦すること。

そして、ここにもうひとつ付け加えたい。

最初から全部を揃えなくてもいい。 アメリカ式のキャリアでは、 まず“業界”か“職種”のどちらか片方だけでも強い側に移る。 それを足場にして、次の転職で残りの片方を揃えていく。 片方ずつ積み上げていけば、 年収も市場価値も階段のように上がっていく。

大切なのは、 どこに足をかけるかを自分で選べるようになること。

私たち氷河期世代は、 構造の外側で戦わざるを得なかった時代を生きてきた。 だからこそ、娘の世代には伝えたい。

構造を知ることは、自分の未来を選べるようになることだ。

そのための地図を、今ここに書き残しておきたい。

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