――厚生年金「上限固定」が示す制度の限界――
給料をもらっても手取りが少ない。 社会保険料が重い。 実質賃金は下がり続けている。
こうした話題は、もはや日常の愚痴として定着している。
私自身、現役時代に「給料をもらいすぎた」経験はなく、 所得税をほとんど払った記憶もない。 住民税が少しあった程度で、むしろ 社会保険料と年金が圧倒的に重かった。
では、最近の社会保険料はどれほど増えているのか。 調べてみたところ、驚くべき事実にたどり着いた。 今日はその話を書いていく。
■ 2017年、厚生年金は“天井”に到達していた
調べて驚いたのだが、厚生年金の保険料率は 2004年改正で 毎年0.354%ずつ引き上げ が続けられていた。 そして 2017年、ついに 18.3% に到達し、そこで完全に固定 された。
驚いたことに、これは「固定」だったのだ。
しかし、これは単なる数字の話では終わらない。 年金制度そのものが“限界点”に到達した という意味を持つ。
本来、厚生年金の保険料率は 賃金が上がれば自然に増える仕組み だった。 しかし上限が設けられたことで、もうそれができなくなった。
つまり、 実質的な給付水準が下がる未来が確定した ということだ。
政府は表向きには 「企業負担が重くなるため」 と説明するが、実際にはもっと深い構造がある。
■ なぜ上限固定が“制度の限界”なのか
厚生年金は賦課方式、つまり 現役世代が高齢者を支える仕組み だ。
しかし今の日本は、次のような状態にある。
- 現役 1.2 人で高齢者 1 人を支える
- 賃金は30年前より低い
- 実質賃金は下がり続けている
- 社会保険料は逆進的に重い
- 少子化は加速し続けている
- 企業の体力は限界
- ゼロ金利で延命された“ゾンビ企業”が大量に存在
この状態で保険料率を上げることは、 制度そのものを壊す行為 になる。
だから政府は 「もうこれ以上は集められない」 と判断し、18.3%で固定した。
私の直感で言えば、 「無闇に集めても、収めた年金分を返せないから止めた」 ということだろう。
■ 上限固定の裏側で進む“給付削減”
保険料率を上げられない以上、 制度を維持するためには 給付を下げるしかない。
その役割を担うのが マクロ経済スライド だ。
内容を確認すると、こういう仕組みになっている。
- 物価が上がっても
- 賃金が上がっても
- 年金はその上昇分を“抑制”される
つまり、 年金は毎年少しずつ目減りする。
いわゆる「年金2000万円問題」が話題になった時期とも重なるが、 将来の年金不安を抱えたままになる という感覚は、 制度の本質そのものだ。
■ 最低賃金の上昇で露呈した“湖の底”
最近、スーパーや工場、ファミレスの求人を見ると 最低賃金付近ばかりだ。
これは搾取ではなく、 「これ以上払えない」 という企業体力の限界を示している。
最低賃金が上がると、 まるで 地殻変動で湖の底が露出する ように、 低生産性企業の“本当の姿”が表に出る。
さらに金利も上がり始めた今、 銀行は赤字企業に貸し続ける余裕がなくなる。 貸し剥がしが増えれば、 資金繰りの悪化 → ゾンビ企業の淘汰 が一気に進む可能性がある。
■ 個人の問題ではなく“構造の問題”
- 賃金が上がらない
- 手取りは減り続ける
- 新しい税や負担が次々と増える
- 年金は減る
- 企業は最低賃金に張り付く
- ゾンビ企業が市場を占有する
これらはすべて、 個人の努力ではどうにもならない“構造の問題” だ。
厚生年金の上限固定は、 その構造が限界に達したことを示す象徴的な出来事だった。
■ 結論:2017年は“時代の転換点”だった
2017年の厚生年金の上限固定は、 「保険料増で制度を維持する時代の終わり」 を意味していた。
それを知ったとき、私はいくばくかの虚しさを感じた。
年金問題はいつの時代にもあった。 団塊の世代の中には「逃げ切った」人も多いだろう。 もし就職氷河期がなければ、 もし少子化がここまで進まなければ、 今日のような虚しさはなかったのだろうか。
そして、私たち世代の年金が 未来の子どもたちに過度な負担にならないよう、 本気で考える政策が必要だと強く思う。


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