朝、SNSで流れてきた一文に足が止まった。
「夫は地銀で40年ローンを組むので、完済は70代後半。もし75でガン発覚しても団信でチャラになるんだよね?」
そんな話題だった。
40年ローン。 70代完済。 がんでチャラ。
言葉だけ並べると、どこか遠い世界の話のようで、でも今の住宅価格を思えば、むしろ“現実的な選択肢”なのだろう。 住宅価格は上がり続け、賃金は伸びない。 だから返済期間を伸ばす。 団信の保障を厚くする。 そうやって、家を買える人を増やす。
金融商品が、時代に合わせて形を変えていくのを感じる。
私が住宅ローンを組んだのは13年前。 団信はローンに混ざらず、別口で毎年払う方式だった。 年間1月に約6万円。 当時3大疾病特約を付けると10万円を超えると言われ、 「無理です」と即答したのを覚えている。
つけたくてつけなかったわけじゃない。 ただ、固定費としては重すぎた。 私にとっての団信は“ローンを成立させるための条件”であって、 安心のために選んだものではなかった。
担保価値も知れている。 保証人がいるわけでもない。 銀行がリスクを取らないための保険。 それが当時の団信だった。
でも、本音を言えば、 「がんが見つかったら団信でチャラになればいいのに」 そんな淡い期待は、私にもあった。
医療費は高額療養費制度で守られる。 治療費そのものは、実はそこまで怖くない。 本当に怖いのは、 “病気になってもローンが残ること”。 高齢になってから病気が見つかったら、 きっと後悔するだろう。
その後悔に対する保険。 それが、今の団信なのだと思う。
40年ローンが当たり前になり、 70代での完済が珍しくなくなった今、 団信は「もしもの時に家族を守る保険」から、 「もしもの時に自分の後悔を消す保険」へと 役割を変えつつある。
長く借りるほど、団信が“当たりやすい保険”になる。 だからこそ、保障は手厚く、金利上乗せで安く見える形に変わった。
私が契約した頃とは、まったく別の世界だ。
SNSの投稿を読みながら、 私は自分の契約時を思い返し、 少しだけ不安になった。
あの時、選べなかった特約。 今なら、もっと軽い負担で付けられたのかもしれない。 そんな“もしも”が頭をよぎる。
でも、あの時の私は、 生活を守るために、固定費を削るために、 最善の判断をしたのだと思う。
住宅ローンは、人生の構造そのもの。 だからこそ、制度の変化を見ると、 自分の選択を静かに振り返りたくなる。
そんな朝だった。

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