AbemaTVの中で、H氏が政府が支援プログラムを決定した就職氷河期世代について語った言葉に、違和感を覚えた。
「現状もう何十年もたっているので、現時点でスキルがないのは自業自得だと僕は思います」 「日本の中で給料をもらえる仕事に合わせるしかない」
世代として言えば、スキルをつけた人もいる。資格を取った人もいる。 それでも 構造の狭間から抜け出せなかった人が多く存在し、そして多くは今もそのままだ。
氷河期世代の非正規率は依然として高い。 それらすべてを「能力不足」で片づけてよいとは、とても思えない。
今日はその話をしたい。

1. 新卒テーブルに乗れなかった世代
就職氷河期世代は、他のどの世代とも違う「構造的なハズレ」を経験した。 大卒就職率 46%──これは私やH氏の世代だけが直面した数字だ。
日本の新卒主義では、新卒で正社員として入社することが“キャリアの初期値”になる。 ここでつまずくと、後からどれだけ努力しても 新卒テーブルに合流することはほぼ不可能だ。
資格を取っても、スキルを磨いても、 「新卒で入った人の賃金テーブル」に追いつく構造にはなっていない。
これは個人の努力ではなく、構造の問題だ。
2. 非正規ブームがキャリア形成を破壊した
氷河期世代が社会に出た直後、日本は非正規雇用の急増期に突入した。
- 正社員登用はほぼゼロ
- 経験値が蓄積しない働き方
- 年齢だけが増えていく
- 中途採用市場は未発達
- 年齢が上がるほど門前払い
「スキルを積めば挽回できる」というタラレバは、 この構造を完全に無視している。
そもそも スキルを積む機会が与えられなかった世代なのだ。
3. 再就職はできる。しかし“別テーブル”のまま
氷河期世代は再就職自体はできる。 しかし問題はそこではない。
- 基本給が最低賃金付近
- 昇給幅が小さい
- 賃金テーブルが新卒組と別次元
- 若い世代に賃金で抜かれる
- 役職ポストが埋まっている
- 40代でも年収300〜400万円帯に固定
つまり、 働けるけれど、並の生活に届かない構造に押し込まれている。
そして何より恐ろしいのは、 この枠が「努力が実って抜け出せた側」の扱いになっていることだ。
これは努力不足ではなく、 キャリア初期値が構造的に低く固定された結果である。
4. 「人並みの賃金」を長時間労働で補う現実
最低賃金付近の基本給を誤魔化すために、 残業・深夜・休日労働で補うしかない。
- 12時間労働
- 週6勤務
- 深夜手当でようやく年収350万円前後
これを「人並みの賃金」と呼ぶのは違う。 これは 人並みに見せかけるための過労だ。
新卒で大手に入った人の賃金テーブルとは、 まったく別世界にある。
5. 「新卒並にしろ」と言いたいわけではない
ここが誤解されやすいが、私は新卒並の待遇を求めているわけではない。
- 同じ昇給カーブに乗せろ
- 同じ役職ポストをよこせ
- 同じ賞与をよこせ
こういう“逆転優遇”を求めているわけではない。 むしろ それは違うと思っている。
ただし、 構造的に埋められない格差が存在することは事実だ。
6. 「救済が欲しいのか」と言われるともどかしい
氷河期世代はずっと「自助努力」を強いられてきた。 だから「救済」という言葉自体がしっくりこない。
- 施しが欲しいわけではない
- 特別扱いを求めているわけでもない
- 世代優遇を求めているわけでもない
ただし、 自己責任ではないし、スキル一つで助かった世代でもない。
ここだけは、声に出して言える。
7. 欲しいのは「普通に働けば普通に暮らせる日本」
多くの募集が最適賃金付近で並び、総支給は負荷の度合いと残業時間で差がつく。
そして、生活保護で救えばいいという話ではない。 生活保護は“生存の最低ライン”であって、 キャリア初期値の不平等を補正する制度ではない。
私が欲しいのはただ一つ。
働けば普通に暮らせる日本。 年齢に関係なく最低賃金に張り付く構造ではない日本。
氷河期世代は、 「努力不足」ではなく 「構造的に取り残された世代」だ。
その事実だけは、 どうか見落とさないでほしい。
8. 厚労省の支援は“氷河期世代だけ”ではない
今回の発言を聞いていて、H氏が何を参照して 「氷河期世代だけ助ける必要はない」と言ったのかが分からなかった。
そこでざっと調べてみたところ、政府の公式サイトに 「就職氷河期世代支援」というURLがあり、まず間違いなくこれを指しているのだろうと感じた。
実際に読んでみると、私の違和感は確信に変わった。
この支援は、名前こそ「氷河期世代」と付いているが、 中身は氷河期世代だけを特別扱いする政策ではない。
掲載されている支援内容はこうだ。
- 経済的に不安がある人
- すぐ働きたい人
- スキルアップしたい人
- キャリア相談をしたい人
- 介護と仕事を両立したい人
- 職場でうまくいかず自信を失った人
- 社会とのつながりに不安がある人
- 家計が苦しい人
- 定年後も働きたい人
- 年金制度を知りたい人
つまり、これは 中高年全般の困りごとを支援する総合窓口であり、 氷河期世代だけを特別扱いする政策ではない。
世代で区切っていないし、 政府は氷河期世代の構造的な不利──キャリア初期値の破壊、非正規ブーム、年齢による門前払い──を理解している。 そして、零れ落ちた層を無視していない。
もちろん、結果が出るかどうかは別問題だ。 日本の政策は「やると言っても実効性が弱い」のはいつものことだし、 この支援もどこまで効果が出るかは分からない。
しかし、少なくとも政府は 「何もしない」を正しいとはしていない。
ここが重要だ。
H氏の批判は、 「氷河期世代だけ助ける政策」という前提で語られている。 しかし実際には、政策の中身は世代優遇ではなく、 困っている中高年全般への支援だ。
だからこそ、 「世代で切るのは間違っている」という批判は、 政策の前提を誤解したままのズレた批判になってしまっている。


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