前回の記事で、私は 「最低賃金1500円は、労働集約型産業では“最高賃金”になる」 と書いた。 今回は、その構造をもう少し深く掘り下げていく。
1. 労働集約型産業は「人件費=価格」から逃れられない
実のところ、私自身も“正社員”という肩書きの裏で、 長時間労働によって最低賃金レベルの実質時給に落ちていた経験が何度もある。 そして、高卒の私が再就職先として何度も見てきた業界でもある。
- 飲食
- 物流
- 小売
- 介護
- 農業
- 清掃
- 建設
これらは典型的な 労働集約型産業 だ。 機械化や自動化が難しく、人が動くことそのものが価値 になっている。
つまり、
人件費が上がれば、そのまま価格に跳ね返る
という構造から逃れられない。
最低賃金が規制で一斉に引き上げられるということは、 競争原理による賃上げではなく、 横一列の同時賃上げ+同時価格転嫁 が強制的に起きるということだ。
そして、賃金が強制的に上がるということは、 社会保険料の会社負担・労働者負担がそのまま増える ことを意味する。 さらに、賃金上昇は付加価値を押し上げるため、 消費税負担も連動して増える。
つまり、賃上げの連鎖は巡り巡って 物価高を呼び込む構造 になっている。
その結果、企業はこう考えるようになる。
「1500円以上は絶対に払えない」
これが、最低賃金1500円が “天井化” する第一歩 である。
2. 昇給が存在しない──1500円で固定される未来
労働集約型産業の多くは、もともと昇給がほとんどない。
- 仕事の難易度が変わらない
- 生産性が上がらない
- 利益率が低い
- 人件費が最大コスト
この構造の中で最低賃金が1500円になった瞬間、
1500円=その職場の最高賃金
となる。
1500円は“スタートライン”ではなく、 “ゴールライン”として固定される。
3. 企業は「総入れ替え」でコストを最適化する
昇給を避けるために、企業は次の戦略を取る。
- 契約更新で労働者を入れ替える
- 若い労働力だけを使う
- 長期雇用を避ける
- 退職金をなくす
- 昇給をゼロにする
つまり、
「1500円で働く若い労働者を循環させる」 というビジネスモデルが完成する。
ここに日本人が入り続ける理由は、もはやない。
4. 日本人は“割高で扱いにくい”労働力になる
1500円時代の現場で、日本人はこう見られる。
- 権利意識がある
- 有給を取る
- 残業代を請求する
- メンタル不調で休む
- 長期雇用を前提にする
一方、外国人労働者は
- 契約更新で総入れ替えできる
- 昇給不要
- 退職金不要
- 若い労働力を常に確保できる
- 現場の言語を外国語化すれば不満が外に漏れない
企業がどちらを選ぶかは明らかだし、私たちは外国人労働者と常に比較される立場になる。
5. 高卒再就職組が“落ちる場所”として固定化される
私もその現場にいた。 高卒再就職組が落ちる場所 として、労働集約型産業は長く存在してきた。
- 昇給がない
- 退職金がない
- 40代で体力的に限界
- 転職しても同じ構造
- 1500円が天井
これは “人生の袋小路” と言っていい。
結婚年収に遠く及ばず、婚姻が遠のき、 そのまま少子化問題へ直結する。
唯一の打開策は、 労働時間を積み上げることだけ という現実がある。
1500円になっても、この構造は変わらない。 むしろ、より強固になる。
■ 結論:1500円は「改善」ではなく「天井の固定化」
最低賃金1500円は、賃金が上がるというよりも、
- 昇給ゼロ
- 退職金ゼロ
- 総入れ替え
- 日本人排除
- 外国人循環労働
- 1500円で固定
という “天井の世界”を確定させる政策 になる。
最低賃金1500円は、希望ではなく、
「ここが限界です」という構造の宣告
に近い。


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