朝からずっと強い雨が降り続いていた。 昼に友人とランチをしていたとき、娘から連絡が入った。
「気分が悪い」
「早退します」
「迎えをお願いします」
今日のこの連絡は言葉通りの単純な体調不良ではない、それらだけで娘の心の限界が伝わってきた。 私はすぐにランチを切り上げ、車を走らせた。
■ 車に乗り込んだ娘は、ただ静かに泣いていた
迎えに行くと、娘は無言で助手席に座り、 しばらくしてからメソメソと静かに泣き始めた。
悩みを打ち明けるわけでもなく、 言葉を探すわけでもなく、 ただ涙だけが落ちていく。
帰りの20分間、 娘はずっとそのままだった。
家に着いても、 「一人になりたい」という空気をまとっていたので、 私は車に娘を残し、そっとしておいた。
■ 娘の涙の理由は、私にはまだわからない
何があったのか。 何に悩み、何に不満を抱え、何を思い詰めているのか。
私はハンドルを握りながら、 雨の音を聞きつつ考えていた。
自分の学生時代を思い返すと、 悩みなんて本当に単純だった。
どのバイクがカッコいいとか、 好きな子の話とか、 怖い先生の噂とか、 少年誌の漫画の展開で盛り上がったりとか。
将来の不安なんてほとんどなく、 世界はもっと単純で、 悩みはもっと軽かった。
■ 娘の世界は、私の頃よりずっと複雑だ
スマホの影響かもしれない。 友達関係の複雑さかもしれない。 将来への不安かもしれない。
理由は一つではなく、 いくつもの小さな負荷が積み重なって、 娘の心を押しつぶしているのだろう。
私の学生時代とは、 もうまったく違う世界を娘は生きている。
だから私は、 「昔の自分はこうだった」と単純に重ねることができない。
■ 親は、子どもの涙の理由をすべて理解できない
今日の私は、 娘の横で泣き声を聞きながら、 何も声をかけられなかった。
でもそれで良かったのだと思う。
若い頃の涙には、 理由が説明できないものもある。 言葉にできない痛みもある。
親はそれを全部理解することはできない。 ただ、雨の中でハンドルを握りながら、 「ここにいるよ」と示すしかない。
■ 今日の着地点
娘の涙の理由はわからない。 でも、泣ける場所があることは確かだ。
家も、車も、そして私も、 娘にとっての 安全基地 のひとつになれているのなら、 それだけで十分だと思えた。
親は、子どもの悩みをすべて解決できない。 ただ、帰る場所を守ることだけはできる。
今日の雨は強かったけれど、 その雨の中で、 私はまたひとつ“親としての役割”を学んだ気がする。


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